久留米大学特任教授 古賀幸久 の考える、これからの生き方論。
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今こそ、生きる思いを充実させる時

#27 2020年4月28日


 地球は多様な生命体の塊です。いろんな生命体それぞれが個性を持ち、相互にバランスよく機能しあって支え合いながら生きています。その生命体間の生態系のバランスが何らかの原因により壊されようとする時には、それぞれの生命体は自己保存のために環境の変化に適応し、何らかの修正する機能が働きます。あらゆる生命体の普遍的な自然現象の一環として自己調整機能が常時働いています。

人間の際限ない欲望

 近年、マネー資本主義の発展などに支えられ、人は生活するにあたり、将来得られる利益を先取りしたバブルの繁栄を謳歌してきました。身の丈をはるかに超えた欲求(需要)を満たし、それに応じた生産活動も膨らませてきました。欲求があまりに急激に拡大し、自己調整機能の限界を顧みなくなった結果、人間社会は取り返しのつかないような様々な問題を抱えこんできました。昨今のSARSやMERS、そして新型コロナウィルスの出現、進化等もそのような過程で生まれるべくして生まれた必然的な現象であるといえます。これらの問題は、いわば、人類の行き過ぎた節度の無い欲求への反作用として生まれた自然現象であるといえます。
 自然の摂理はあらゆる生物が共存することによって支え合った豊かさを循環させることを求めてきました。しかし、人間の膨張する果てしない欲望は自然と共存している他の生命体の領域までも侵入していきました。侵入された生命体は生存のために新たに人間社会の中での生き延びることを模索しはじめました。ところが、人間はその生命体が本来持っている体質とうまく折り合えないと判断すれば排除することを繰り返してきました。

自然共生・社会循環と人間の欲望の修正

 人間だけの都合による果てしない欲望は金融システムによる信用創造という魔法のレバーも生み出しました。人類はそれによって将来得られるかもしれない不確定な利益を何十年も先取りしながら生きてきました。人間も自然の一部であるならば、その生き方は本来基本的に自然共生や社会循環とは両立しにくいものです。持続性のある豊かな循環が可能になるためには、自然と生命の望ましい関係性を維持することであり、すべての生命体が適切なバランスと距離感をもって共存できるような関係性が求められます。豊かな循環を維持する基盤はそこにあります。自然は人間だけの都合に関係性を合わせてはくれません。
 人間だけに都合のいい行為が自然共生や社会循環で許される許容限度を超えた場合は、自然による必然的な修正が図られます。人間の行為が他の生命との共存を犠牲にするような侵入や破壊を繰り返すことは、生命体が新たな知恵を持ち、進化し、生き残りをかけて変化することを余儀なくさせます。近代科学の発展は人間の自己中心的な欲望の成就のための支えとなり、生存と安住の場所を奪われて人間社会でさまよい続ける生命体を排除し、抹殺する役割を果たしてきました。

生きる思いの充実と実践

 私たちの心のあり様も自然現象の一環です。その私たちはどのような意思と志を持って生き方を修正していけばいいのでしょうか。私たちが幸せに生きるためには、これからの自然と社会が豊かに循環していくようにすることが大切です。もちろん、科学の力によって尊い命を大事にしていくことは必要です。その際に、私たちが常に心に抱いておくべきことは、尊い命であるが故に、より豊かで幸せな生活を送ろうとする思いを強くするということと、そのために実践するということです。さもなければ節度の無い人間の知識や科学は自然を壊し、その中に生きる人類そのものを含めたすべての生命を蔑ろにし、その結果、自らと社会を不幸に落とし込むことになります。

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