久留米大学特任教授 古賀幸久 の考える、これからの生き方論。
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他人と話すときの心構え

#20 2019年12月24日


 他人と話すときに、どのような表現の仕方が望ましいのでしょうか。このことを考えておくことは意味があります。なぜなら、どのように表現するのかを知っておくことで問題や課題への取り組むための望ましい環境作りに大きく影響してくるからです。ここでは、表現の仕方の大事さを判断できるよう、基本的な心がけを記してみます。

情報の入り口と出口

 生物には入り口と出口があります。食べ物の入るところは口で、出るところはお尻です。情報や知識の入り口は「五感」や「頭脳」であり、出口は「言葉」や「行動」になります。
 情報や知識は意欲があれば入り口からいくらでも入ってきます。ところが、その出口である「言葉や行動」は一般的に心でかみ砕いて消化し、一定のまとまりのある形を持ったものとして表現されます。
 その表現の仕方を二つに大別して定義してみます。一つはよく消化された柔らかい言葉で表現される場合です。物の言い様がおだやかで優しさがあり、内容的にバランスがあります。相手の気持ちを配慮した暖かみのある表現です。自己中心的なミーファースト言葉ではなく、ユーファースト言葉が多くなります。あと一つは消化不良の言葉で表現される場合です。共感しにくい冷たい表現で、内容的にも独自の専門的知識をひけらかすようなバランスに欠けたものになります。ユーファーストではなく、ミーファーストで話します。相手が何を望んでいるかは注意を払わず、自分中心の言葉や内容を選びます。
 状況次第で、人は一般にどちらの性格も多かれ少なかれ享有するものです。でも、相手に対応した物の言い方に事前に配慮しようとする心掛けがあれば人間関係の姿が変わってくることは言うまでもないことです。前者の言い方をすれば人間関係に安心感と幸福感が生まれ、社会一般の信頼関係も深めます。それに対して、後者では不愉快と不安定感、そして社会的な不信感が助長されます。前者の比率が後者よりも多いことが社会的な精神的・文化的感性を高揚させ、平穏な日常生活の基盤となっていきます。

思いやりと相手の大事なものへの尊重

 それらの二つの違いを生み出す原因は何なのでしょうか。
 それは、“相手への思いやり”の有無です。ユーファーストで話せるようにするためには、まず、相手の望んでいることを事前に知っておくか、又は想定していることが前提になってきます。自分にとって相手との望ましい会話を成立させるためには、相手のある程度の気持ちを知ったうえで、あるいは、少なくとも、その周辺の気持ちを感じ取ったうえで “物の言い様”を判断することが大事です。
 ユーファーストで話すということは単に相手のことだけを考えて話すことではなく、むしろ自分との関係性を豊かにするためのユーファーストでもなければいけないのです。ユーファーストで話すということは、相手が喜ぶ情報を提供してやれるための手段でもあり、それによってお互いに安心感と幸福感、そして、信頼感を高めることで安定的な良い人間関係が導かれることになります。
 情報収集の重要性はあらゆる当事者間において重要になります。国家間のみではなく、個人間においても然りです。自分のことを大事にすることは、他人から自分の大事なものを尊重してもらうことであり、そのためにも、相手のことを大事にすることは必然的なことです。常に、私たちには相手の大事なものをお互いに知って大切にしようとする思いと、その実践のための努力が要求されます。

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