久留米大学特任教授 古賀幸久 の考える、これからの生き方論。
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「社会を変えたい」という意味

#15 2019年9月10日


 「社会を変えたい」という表現をよく耳にします。一体、何をどのように変えたいのか、そこには人それぞれの不安や欲求による何らかの思いや願いがこめられているのでしょう。私なりにこの表現の意味を解釈してみます。
 「社会を変えたい」という願いが生まれる時には、不安、恐怖、不満、退屈などから逃れたいという欲求が背景にあります。そのようなフラストレーションをもたらすような現状から逃れるために社会を変えたいと願っているのです。

自分自身の変革

 まず、「社会を変えたい」と述べる人であっても、不安をもたらすものが何であるのか明確なものがなく、漠然とした意識の中で何とかせねばと途方に暮れている場合があります。自分自身の不平不満の原因がどこにあるのかについて掴み切れていない状態です。自分の不平不満の原因を人々や社会のせいにして、そのような社会を変える必要があると主張することもできるでしょう。でも、自分自身の大事なものや求めるものが何なのかが漠然としているのであれば、社会のどの問題や課題をどのように取り組んで解決する必要があるのかをはっきりと示すことも実践することもできません。この場合、まず変わるべきはむしろ自分自身であるといえます。

社会を変えるための実践と課題

 次に、不安をもたらす具体的な社会の問題や課題に対応したい、そのために何らかの実践をして社会を変えたいという場合があります。その際、行動を起こすことによって何らかの新しいものが創造されれば、多かれ少なかれ古いものが壊されていくことがあります。この時、古いものを守ろうとする人は新しいものを拒絶する傾向があります。新しいものによってこれまでの既得権益、仕事などが失われる場合があるからです。
 普段、一般的な私たちの日常生活では、新しく創造される長所をこれまでの社会の中に取り込みながら生きています。つまり、多くの人は「古いもの」と「新しいもの」の長所を上手に生かしながら、より安心感のある安定した生活を送りたいと願って生活をしています。しかし、もし新しいものが社会的に価値があっても、今ある安定状態が脅かされる立場の人々からは敬遠されることが多いでしょう。このような立場の方々はかつては社会の創造的貢献者であった場合もあります。社会を変えたいとして具体的な行動を起こす人は、新しく創造される価値を生かしてより良く生きていけるためにも、これらのことをしっかりと認識しながら、過去と望ましい未来の安定調和を図るような高等なやり方を考えることが得策でしょう。

人は過去と将来の絆を結ぶ架け橋

 社会にはこれまでの古い伝統、慣習、社会・経済制度などの上に新しいものが折り重なり、互いに溶け込みあっています。そして、それらを育んできた根底には人々が歴史的に長く繋がってきている人間関係の縦横な広がりと深さがあります。それを基盤とする現在進行中の社会の姿と形は人々の生活の知恵が求めた一つの落としどころともいえます。
 過去から現在そして未来へとダイナミックに変動していく過程で、人はだれでも否応なしに過去と将来の創造的な掛け橋としての役割を背負います。人は、それぞれの個性的な道を歩む中で、これまでと同じように人生や社会の先輩や後輩とも繋がりながら人間的信頼と社会的信用の基盤を築いていきます。
 いつの時代でも、過去に感謝し、良き未来を願い、現在の自分や他人の大切な思いに向き合い、共感し、応援し合う心を育むことができれば信頼と信用に溢れた豊かな社会になります。日進月歩の激動の社会的変化に戸惑いながらも、そのような心を育む機会に恵まれれば幸いです。

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