久留米大学特任教授 古賀幸久 の考える、これからの生き方論。
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心のバリアフリー

#11 2019年7月30日


 一昨年、重度の障害を持たれる方々のための療養センターを訪問する機会がありました。自分を表現することが辛うじて出来る方から、全くできない方まで、様々な方々が専門家の援助を受けながら生活をしておられました。それぞれの個性に合った生き方、時間の過ごし方があることなど、今までに想像できなかったことを知る機会に恵まれました。その時に強く印象に残ったことは、療養センターの方々は殆ど自己表現ができないかもしれないけれども、私に何らかの気持ちを伝えたいと思っているのではないかということでした。

大事なことは何か

 普段、私たちは、このような重い障害を持つ方を何らかの援助や支援を受ける対象として見がちです。でも、この方々が強く訴えかけていることは、「支援をして欲しい」というような受動的なことよりも、むしろ、普段気づかない「人として大事なことを知って欲しい」という強い思いであるような気がします。人として「普通の状態であることが一番の幸せであり、それを大事にして欲しい」ということです。それは、「普通に健康であること」、「普通にご飯が食べられること」、「普通に仕事ができること」など、そして、それを支える「命の尊さ」、「人や社会とのつながりの大事さ」などについてです。普段はあまり気づかないそれらの最も大切な当たり前のことをこの方々は体を張って心から訴えておられるように感じます。

気づかせてもらう

 療養センターの方々は「この思いを感じてもらえることができれば、あなたの人生を不平や不満で苦しむのではなく、もっと楽しく生きがいのあるものにすることが出来るのではないでしょうか。」と心で表現されていたように感じます。支援していると思っていた方々から、実は、逆に、最も大事なことを気づかせてもらい、教えてもらったように思います。
 人と人との関係は、全ての方々の関係の中で「互いに気づかせてもらい、互いに感謝しあう」関係で結ばれていくことが大事なのでしょう。

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