久留米大学特任教授 古賀幸久 の考える、これからの生き方論。
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あなたは将来何をしたいですか。

#4 2019年5月27日

好きなこと(仕事)をして暮らす

 個人としての理想は、一番好きなこと(仕事)をして暮らしていけること、でしょう。実は、それは社会的にも正解です。なぜならば、それは、個人の能力を最も高く発揮することが出来る仕事であり、同時に社会的な付加価値を最も高めることにもなるからです。あなただけ喜ぶのではなく、周りの人や、そして、社会からも喜ばれることだからです。
 私は若いころから夢を砕かれ続けてきました。勉強も嫌いでかつ劣等生でした。好きな野球でも挫折し、進学にも就職にも興味も持てずに、迷い続けていました。結局、成り行きで大学に進学。楽しくもない勉強の代わりに、外国旅行の夢が膨らみ、同時に外国人留学生との会話を通してようやく英語に興味を持てるようになりました。これが大きな人生の分岐点となりました。
 そのような偶然の遊び心から将来に夢が生まれ、それが現実化して外務省に入省して外交官になりました。思えば、「世界旅行が出来る職業は何か?」、その思いから、一番魅力的に感じた職業が外交官でした。外交官として世界中を旅行しながら仕事をするイメージと同時に、食いしん坊の私にとって好きな食事やお酒を楽しみながら仕事をしているイメージが脳裏に浮かんでいました。
 劣等生の私が、商学部経営学科に在籍しながら遅ればせながら大学3年の後半から独学で外交官の試験勉強に真剣に取り掛かりはじめました。学部卒業後は大学院の法学研究科に入学し、修士課程で国際法を専攻しながら、外交官試験勉強にも取り組みました。1年間の病気休養(劇症的な肝炎で3か月間の入院と1年間の休学を余儀なくされました)の後、諦めずに試験勉強を継続した結果、なんとか外交官専門職試験に合格し、修士課程卒業と同時に外務省へ入省しました。イスラームの国家、パキスタンから外交官研修生活がはじまり、その後、13年間の在外と本省勤務の後に、縁あって大学に転職しました。
 人生は予期せぬように展開・発展していきます。旅行への思いが契機となって外務省へ、そしてイスラームを勉強する機会があって現在の大学の教員へとつながっています。様々な夢と希望、失敗と挫折が複雑に絡み合った人生でした。

周辺を捜せ

 人が一番やりたいことをするとしても、なかなか、思い通りにいかないことが普通です。一番好きなことが出来るようになったとしても、思っていたほど楽しくないことも多いのです。失望が大きく、立て直すことも結構しんどい状態にもなります。しかし、人は生きていくために何らかの仕事をする必要があります。
 また、一番好きな仕事を目指して出来るよう努力しても、どうしてもうまくいかなければ、その時には何か他のことを捜して見つけなければなりません。
 一番好きなことをやっているのに、思うようにいかないことも多いのです。自分は好きだけど、社会が受け入れてくれない場合などは特にそうです。また、自分の能力不足ということもあります。人が本当に好きなことを仕事にして暮らしていける人はほんの一部の人でしかないでしょう。殆どの人は好きだけでは満足に飯を食べていけるようにはならないのです。
 でも、本当にやりたいという希望が実現しなくても失望しなくてもいいのです。大事なことは、その夢を持っているということが個性の核であり、そこから人生の物語が作られていきます。その個性を核にして、ボンヤリとではあっても、一定の方向に目星がつけられ、そこから一足一足が刻まれていくことになります。

 例えば、野球の選手なりたいとしても、実現できなければ、野球関連の仕事にも興味をもって取り組む事も可能です。選手になることだけが大事ではないのです。プレーヤーになれる能力のある人はそのための努力をして自分に付加価値をつけます。プレーヤーになれなくても見て楽しむ人はスポーツ文化の付加価値を高める役割を持ちます。また、プレーヤーになれなくてもスポーツ関連の仕事をする人は経済的な付加価値を生んでくれます。いずれも不可欠な大事な役割であり、これらがすべて有機的に関連し、支えあって社会がなりたっているのです。
 もしプロの選手になる能力と素質がなくとも、文学が好きであれば野球試合の報道記者、新聞記者、放送界の仕事などが職業としては魅力的に感じるでしょうし、英語が好きであれば、野球商品の海外販売や通訳の仕事などもあるでしょう。また、理数系・技術系が好きであれば野球選手のトレーナー、スポーツドクターなども考えられます。芸術系が好きであれば野球試合のカメラマン、スポーツライター、レポーターなど。商業・経営系が好きであればプロ野球球団のフロントへの配属、球場職員、球団トレーナー、パーソナルトレーナー、スカウトマンなど。医療・健康系が好きであれば栄養士・調理師、アスレティックトレーナーなど。体育系が好きであれば、審判、警備員、グラウンドキーパーなど。法律系が好きであれば、弁護士、プロ野球選手の代理人、税理士など。国際政治が好きであればWBC関連の仕事、国際的スポーツ機関、公務員、スポーツ新聞記者、国際交流事業、スポーツ国際ボランティア活動、国際的スポーツイベントプロモーターなど。数えればきりがない程の例が挙げられると思います。
 そして、野球選手になった人は、実は他の仕事をやりたかったけど能力が不足している人であるかもしれません。また、野球選手になれなかった人が、野球選手になった人より楽しく生きがいのある別次元の高い能力を要する仕事をしているかもしれません。
 自分の能力と可能性を考えながら、どんな仕事が一番幸せな楽しいものに結び付きやすいかを捜していくことが大事です。仕事を楽しめる時間にするために、無理のない実力と個性に合った興味ある仕事をすることが望ましいことです。それが、人の能力を最も高く発揮させ、自分を幸せにすることが出来る仕事であり、社会的な価値を蓄積していきます。そして、その喜びが、周りの人や、そして、社会の喜びにもなります。

好きなことをやることは社会に価値を生み、失敗しても得るものが多い

 社会には問題や課題がたくさんあります。自分のやりたいことは社会に価値を生むようになります。人がそれらの社会的な問題や課題に向き合えば、他の人も幸せにします。
 このような思いで、人は夢に向かって動けば、たとえ夢が砕けて終わっても、その経験は次の大きな成長のエネルギーとなって次の夢へと導き、支えていってくれるでしょう。失敗しても無駄な物はなにもありません。思い切ってやってみてください。そして、夢が現実のものであるかどうかを適切なタイミングで判断しながら、進んでみてください。

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